ホームステージングをすると物件が早く売れるとされています。しかし、ステージングした物件を実際に見たことはない、という方がほとんどではないでしょうか。また、知り合いに経験者が見つかることも少ないと思います。
私は、2015年に自宅マンションを売却した際にホームステージングを取り入れて売却を成功させました。
この記事では、私が体験したホームステージングの経験をお伝えします。
ホームステージングって何?、ステージングサービスを受けるときの流れは?といった点については、別の記事をご覧ください。<ホームステージングについての解説はこちら>
売却物件は駅前タワーマンション高層階
売却の対象とした物件は、自宅として購入し居住していた築2年のタワーマンション。広さ約60m2で間取りは1LDK、南東向きの高層階(ほぼ最上階)のお部屋です。
おおよその間取りは次のようなものです。玄関を入ると正面に洗面とお風呂に続く引き戸、その左隣にトイレ、その奥にリビングドア。ドアを抜けると右手にセミオープンのIHキッチン、左手には約2畳の大容量納戸とリビング収納、正面に横長リビングが広がってういます。ワイドスパン住戸のため、ベランダは幅約9m、奥行きは約1.6mありました。ベランダに向かってリビングの左手に一部屋、1.5畳程度のウォークインクローゼットのついた寝室があるという間取りです。
【物件状態】良好
築2年のため状態は良かったと思います。特に破損汚損箇所はありませんでした。フローリングには少し傷がありましたので、仲介業者の無料サービスを活用して補修しました。
引っ越しを済ませて空室状態で販売をスタート。部屋の掃除は筆者自身で行いました。掃除機、拭き掃除はもちろん、水回りは金属部分の水垢も落としてピカピカに磨き上げ、販売期間中、週に一度は掃除機をかけ換気を続けました。
【競合環境】同じマンションで3戸の売り物件
競合は同一建物内の2物件。
1件目はほぼ同じ広さで2LDKのお部屋と、同じ間取りでタワーの反対側(西側)のお部屋。
2件目は2LDKのお部屋で賃貸に出ている収益物件のオーナーチェンジでした。
実質的な競合は1件目の同じ間取りのお部屋でした。
【販売状況】3ヶ月経過して足踏み状態
自宅マンションに隣接する不動産屋さんで専任専属契約を結んで活動を開始。不動産屋さんの担当者に撮影していただいた写真を使って店頭チラシの他に、自社サイト、SUUMOなどいくつかのWEBサイトに物件を登録して販売をスタートしました。
不動産屋さんの店舗が近かったこともあり、通りがかりに見たいとおっしゃったお客様、投資家の方など、何組かのお客様が内覧されましたが、徐々に来場者が減ってきていました。
まもなく、販売開始から3ヶ月。仲介契約が更新を迎える頃、競合物件が価格変更。提示価格を下げてきました。
【売却条件】住宅ローン条件のため6ヶ月間
私たちには遅くとも6ヶ月間で売却しなければならない理由がありました。
次に購入した物件の住宅ローンの条件が、旧自宅を6か月以内に売却することだったからです。
すでに3か月か経過しているので、競合物件よりも早く成約することは絶対条件でした。
競合は10階下で低価格で売り出しています。価格競争には持ち込みたくはありません。
そこで私たちは物件を魅力的に見せて価格を維持することにしました。
物件の早期売却のため、ホームステージングを検討する
競合物件は現オーナーの家具が入ったまま写真を掲載していました。
男性の一人暮らし感が強く7,000万円に迫る価格に対する魅力は伝えられていませんでした。
これではこの価格で買う人いないよねと思うと同時に、この物件がどんどん値引き戦略を取ってきたら、値崩れが起きてしまう。恐怖すら感じたことを覚えています。
そこで私たちは、階差以上の価値を感じてもらえる何かを探すことになります。
『家具がなくなると狭さが強調されるよね。家具レンタルとかできない?』この質問が、直前まで見ていた、別な不動産屋さんのホームステージングサービスとつながりました。
これ、やってみよう!
こうしてホームステージングをやってみることが決まりました。
私たちは、無料ホームステージングサービスを提供する不動産屋さんに乗り換え・・・・なかったんです。実は。
無料のホームステージングサービスをしなかった理由
別の不動産さんではホームステージングを無料でおこなうサービスがありました。今の不動産屋さんで3ヶ月販売し、ちょうど更新契約の時期になっていました。
今の不動産屋さんに同じようなサービスはできないのか?と交渉しましたが、家具レンタルのサービスがあるものの、ステージングはやっていないとのこと。
乗り換え案が有力でしたが、最終的に別な不動産屋さんへは乗り換えませんでした。
決め手は今の不動産屋さんが物件に隣接する商業施設に店舗を構えていたことです。その店舗の前は通行量があり、物件情報に目を止める人もそれなりに見受けられました。その店頭に掲示されている私たちの物件に興味を持っていただいた方がいらしたとき、雨にも濡れずすぐに物件をご案内することができるメリットは大きいと思ったからです。
今はネットでどこからでも物件情報にアクセスできます。
でも、物件に隣接するその不動産屋さんの店頭の掲示板に紙の情報を貼り出していただく、つまりその場所に広告を出すには、やはりその店舗で契約するのがベストだったのです。
こうして私たちは無料のサービスを諦め、ホームステージングを自費で行うことになりました。
ホームステージングの費用で店舗前広告を買ったともいえます。ただしこれは特殊なケースかもしれません。
ホームステージング・ジャパンに連絡をとる
野村不動産のホームステージング・サービスの内容を調べる中で、そのサービスはホームステージング・ジャパンという会社が請け負っていることを知りました。
そこで、私は直接ホームステージング・ジャパンに連絡をとり、私たちのマンションのステージングを受けてもらえないか相談することにしました。
メールしたところ、すぐに簡単な会社紹介のメールが記載された返事がきました。売却物件の現地で打ち合わせできれば詳しいお話をお伺いできるとのこと。一日も無駄にはできない私たちは直近の日付でお話を伺うことになりました。
【ホームステージング】打ち合わせのためホームステージャーさんご来宅
指定のお時間にホームステージャーさんがお越しになりました。ホームステージャーさんからはホームステージングのことやサービス内容、価格などについて、詳しいご説明をいただきました。
実際に物件をご確認いただき、この広さならメインとなるLDKをしっかりと演出すれば大丈夫ですとのことで、奥の寝室は特に何もしないことに。水回りも明るく清潔にされているので特に何も必要ないのではないかという結論になりました。
料金はスタンダードコースの範囲内のため、20万円ほどで収まりました。
この時点では運び込まれる家具や配置はホームステージャーさんのイメージの中にあり、私たちには特に細かい提示はありません。セッティングされるまでのお楽しみとなります。
【ホームステージング】家具の搬入
当日はさながら引っ越しのようです。テーブル、椅子、ソファー、ラグ、グリーン、カーテンや小物類が次々と運び込まれてセッティングされていきます。作業自体は数時間であっという間に完了。
我が家のステージングに使用された家具はほぼ全てがIKEAの家具でした。マンション購入時のモデルルームのように華麗な装飾するものと思っていた私は拍子抜けしました。
【ホームステージング】物件売却へのこだわりがインテリアコーディネートとの違い
インテリア・コーディネートとホームステージングの違いは、前者が複数の家具をバランスよく組み合わせて住みやすく居心地の良い空間を作り出そうとするスキルであるのに対して、後者はその空間に入った人の目線を物件の長所に誘導し、物件を早く成約につなげる技術であることです。
【ホームステージング】早く売る技術
ホームステージング・ジャパンのホームページに書かれたキャッチコピーは「THE ART OF SELLING YOUR HOME FAST」(あなたの家を早く売るための技術)です。
我が家のケースでは、物件の良いところはベランダからの景色でした。眼下に広がる街並み、蛇行する川、空港を発着する飛行機・・・。ただし、至近距離にもう一本のタワーが見えるというマイナスの面も持ち合わせていました。
そこで、LDKに入った人の視線をベランダからの景色、とりわけ景色のぬけ感の強い部分に誘導するようにステージングが行われました。
左右非対称のカーテンで視線をブロック
窓にはカーテンがかけられましたが、全開でも全閉でもなく、しかも左右が非対称の開き方になっています。
リビングドアを入ると正面にベランダの掃き出し窓が目に入りますが、ドアの位置からみると左1/4は隣接するタワーがあって景色に抜け感がありません。右1/4はベランダにある柱に邪魔されて明るくありません。中央部分からやや右側を見たときに景色に抜け感があり、高層階特有の眺望の良さが感じられます。
カーテンが左右対称だったのはこの特徴を強調するためでした。
左端のカーテンは上部を少し閉め気味に固定してタッセルで持ち上げることで、隣接タワーの存在を目立ちにくくしています。
中央のカーテンは全開でタッセルで固定し右側のカーテンは閉めてベランダの柱の目隠しになっていました。
柱をカバーし視線を誘導する観葉植物
横長リビングですが、ベランダのサッシはセンターオープンではなく、中央部には1m 程の幅の壁があり、窓は左右に分かれています。中央部の壁の前には観葉植物が設置されました。
リビングドアからみると、ちょうど正面が壁になります。この部分に観葉植物が置かれることで、部屋に入った瞬間にグリーンに目が止まり、その後ろにある正面の壁の存在感が消えました。
また、目が止まったグリーンの左隣のカーテンが開いており、その窓からは高層階特有のぬけ感が感じられる景色が目に入ります。
部屋に入った方は、まずグリーンに目をやり、眺望に視線を誘導され、そのまま窓の方に誘われます。すでに抜け感のある景色に目が止まっているので、隣にそびえ立つ隣接タワーの影響は抑えられ、一番眺望の良いポイントに誘導されます。
部屋を広く魅せる小ぶりのテーブルセット
リビングの右側にはIKEAのシンプルな白いテーブルセットが置かれました。
我が家では利便性を考えて一畳サイズの大型テーブルを置いていましたが、決して広くないLD、部屋を広く見せるには小ぶりなテーブルが最適でした。
マンションですので、真っ白の壁、薄いクリーム色の床という少しフェミニンな色合いのお部屋です。家具自体が必要以上に主張せずお部屋自体の広さを引き立てるには、白くて小ぶりなダイニングテーブルが最適でした。
おそらく、来訪者はそこにテーブルが置かれていたことは記憶していても、どのようなテーブルだったかは記憶に残らなかったことでしょう。
それでも、ベランダからの景色に魅せられた来訪者が部屋の中に視線を戻しダイニングエリアに目を向けたときに、足元に残された空間から部屋の広さを感じ取れ、ベランダの柱の目隠しになっているカーテンの存在から目を逸らせるには十分でした。
アピールポイントに視線を固定する壁際のソファ
LD右側ゾーンのダイニングのテーブル付近から振り返ると部屋の反対側に置かれたソファに目が止まります。
ソファの前にはラグが敷かれ、ソファに座るように促されているように感じます。
ソファに誘われるままに部屋の反対側まで歩きます。部屋の長手方向を端まで歩くことで部屋の広さを感じ取ることができます。
ソファに腰掛けると、最も抜け感の感じられるちょうど良い角度でベランダからの眺望が視界に入ります。
ソファに座った角度からは隣接するタワーは真横の位置になり視界の端に追いやられて圧迫感を感じなくなりました。
レイアウトは勝手に動かさないのがお約束
作業が終わったら、この後の写真撮影のこととと、注意喚起として、家具類の配置を勝手に変更したり
しないようにとの指示があり、解散となります。
冒頭で触れた通り、カーテンの状態ですら意図を持って全てがセッティングされています。
私たちは言われた通り、位置などが変わらないように気をつけて保全に努めました。
専属カメラマンさんのデータを販売ページに掲載
写真は専属のカメラマンさんがパシャパシャと手際よく撮影され、これまたあっというまに完了。
データはJPEGファイルでいただけました。
受け取ったファイルはすぐに不動産屋の担当営業さんにメールで送付。全ての写真をすぐに入れ替えていただくようにお願いしたところ、翌日には写真が入れ替わりました。
不動産屋さんの店頭に看板を特別に設置
専属専任契約を4ヶ月目以降も継続契約するにあたって、不動産屋さんに伝えていたことがありました。
- 私たちはホームステージングを自費でおこなうこと。
- こちらで写真を用意するので販売ページなどの写真を差し替えて欲しいこと。
- 専属専任媒介を継続するので何かできることがないか考えてもらうこと。
結果的にその不動産屋さんでは、店舗前に専用の看板を設置していただけることになりました。
いつもは店舗の掲示板に物件のチラシが掲示されているだけのところに、1物件だけ写真入りの置き看板を設置していただけたので、目玉商品的な見え方でかなり目立っていました。
購入者現る
結果として、ホームステージング写真を導入して3週間、最終的に購入者が現れました。購入していただいたのはごく近所にお住まいの方でした。ステージング写真の看板を含め日常生活の中で物件情報をご覧になっていた方でした。
ホームステージングを取り入れて自宅売却した私が今思うこと
私のケースはある意味かなりラッキーだったと思います。売却に4ヶ月かかってしまったとはいえ、目標の6ヶ月以内でしかも売却益が残る価格で手放すことができました。
単純にホームステージングをしたから早く売れたのかというとそうではありません。専属専売契約だからと不動産仲介の営業マンに一任するのではなく、どうすれば売れるか、考えて悩んで行動しました。住んでいたときに同じマンションの住人と交流する中でわかった実際の住人の層、どこから引っ越してきたのか?そのような情報を全て思い起こして、近所に住む方に焦点を絞り、最も物件に近い信頼のできるお店で専属契約を結びました。自らコストを払い物件の魅力アップをおこない、お客様に合わせて予定を空け、自分でも物件を案内しました。最終的には2回の値下げを行いました。合計すると数百万円の値下げです。それでも利益が残りました。
ホームステージングは必須とは思いません。ステージングをしなくても空室の物件を小綺麗に掃除するだけで魅力を伝えられ、売れる物件もあると思います。ただ、多くの場合、家具がないと部屋は必要以上に小さく見えます。ステージング家具を入れることでその狭さ感が緩和されます。
それだけならレンタル家具で十分ですが、ホームステージングの真髄は「物件を早く売る技術」です。
きれいに魅せるインテリアコーディネートとは異なるセンスが必要です。そこには20万円、30万円の先行投資をする価値が十分にあります。
この記事を読む皆様は、これからさまざまな事情で自宅を手放される状況かと思います。不動産屋を複数から選べるとき、物件からの近さは、コロナ禍に置いてオンライン○○が伸びてきている今でも考慮すべきポイントだと思います。
信頼できる不動産業者が近くにあるなら、そこを念頭に検討するのが良いでしょう。
その上で自分が騙されないためにきちんと複数業者で査定を行なって相場を知り、売却戦略を立てていただければと思います。
もしあなたがステージングに興味があり、やってみたいと思われるのであれば、下にリンクを置いた野村不動産は検討すべき有力な候補となります。もしそれ以外の仲介業者を選ばれるのであれば、ホームステージングのパートナーとしては、私も利用したホームステージングジャパンさんがおすすめです。
業者選びについては、別記事を用意しました。記事中にお勧め業者を記載しています。
あなたのニーズに合わせてご選択されるとよろしいかと存じます。
長くなりました。ご精読ありがとうございました。